Wednesday, July 28, 2010, 09:25 PM - 法人税
(定期保険の取扱い)
定期保険は、養老保険と異なり満期返戻金や配当金がないことから、その支払保険料については、原則として資産計上の必要がなく、その支払時に支払保険料、福利厚生費又は給与として損金の額に算入する(法人税基本通達9−3−5)。
ただし、定期保険うち、保険期間が非常に長期に設定されている場合には、年を経るに従って事故発生率が高くなるため、本来は保険料は年を経るに従って高額になるが、実際の支払保険料は、その長期の保険期間にわたって平準化して算定されることから、保険期間の前半において支払う保険料の中に相当多額の前払保険料が含まれることとなる。このため、保険期間の前半に中途解約等をした場合は、支払保険料の相当部分が解約返戻金として契約者に支払われることになり、支払保険料を支払時に損金算入することに課税上の問題が生じる。
そのため、一定の要件を満たす長期平準定期保険の保険料については、保険期間の60%に相当する期間に支払う保険料の2分の1相当額を前払保険料等として資産計上することとされる(平成8年7月4日付課法2−3、平成20年2月28日付課法2−3による改正後の昭和62年6月16日付課法2−2「法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(通達)」参照)。
(注) 長期平準定期保険とは、その保険期間満了の時における被保険者の年齢が70歳を超え、かつ、当該保険に加入した時における被保険者の年齢に保険期間の2倍に相当する数を加えた数が105を超えるもの。
(解約返戻金のない定期保険の取扱い)
長期平準定期保険の要件に該当する場合であっても、その契約内容で支払保険料は掛捨て、契約失効、契約解除、解約、保険金の減額及び保険期間の変更等があっても、一切解約返戻金等の支払はなく、純粋な保障のみを目的とした定期保険であれば、保険料の支払時の損金算入による税効果を利用し、その一方で簿外資金を留保するといった、課税上の問題は生ずることはない。長期平準定期保険の取扱いは、解約返戻金の支払が一切ないものを対象とする趣旨ではない。
このような定期保険については、長期平準定期保険の取扱いを適用せず、定期保険の一般的な取扱い(法人税基本通達9−3−5)に従って、その支払った保険料の額は、期間の経過に応じて損金の額に算入して差し支えないものと考えられる。
(国税庁 質疑応答事例)
法人が支払う長期平準定期保険等の保険料の取扱いについて(通達)
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kobetsu/hojin/870616/01.htm
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Tuesday, June 1, 2010, 08:23 AM - 所得税
1 大工、左官、とび職等の定義
「大工、左官、とび職等」とは、日本標準職業分類(総務省)の「大工」、「左官」、「とび職」、「石工」、「板金作業者」、「屋根ふき作業者」、「塗装作業者」、「植木職、造園師」、「畳職」に分類する者その他これらに類する者をいう。
2 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得区分
事業所得とは、自己の計算において独立して行われる事業から生ずる所得をいい、例えば、請負契約又はこれに準ずる契約に基づく業務の遂行ないし役務の提供の対価は事業所得に該当する。また、雇用契約又はこれに準ずる契約に基づく役務の提供の対価は、事業所得に該当せず、給与所得に該当する。
したがって、大工、左官、とび職等が、建設、据付け、組立てその他これらに類する作業において、業務を遂行し又は役務を提供したことの対価として支払を受けた報酬に係る所得区分は、当該報酬が、請負契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのか、又は、雇用契約若しくはこれに準ずる契約に基づく対価であるのかにより判定するのであるから留意する。
この場合において、その区分が明らかでないときは、例えば、次の事項を総合勘案して判定するものとする。
(1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。
(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。
(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。
(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。
(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
( 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)平成21年12月17日付課個5−5 )
3 大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いに関する留意点
http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/091217/pdf/01.pdf
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Friday, May 7, 2010, 11:14 PM - 相続税・贈与税
甲と乙は離婚の協議が成立し、財産分与として甲から乙へ時価3,000万円の不動産を譲渡し、その際、乙が甲のその不動産の取得に係る借入金残高1,800万円の返済を引受けることで合意した。(この財産分与は婚姻期間中の財産形成の実態からして妥当な額である。)
この財産分与によって発生する甲に係る譲渡所得の収入金額はいくらか。
個人間の相続、遺贈又は贈与による資産の移転については、原則として取得費、取得時期を引継ぎ課税を繰延べる。(所法60(1))
財産分与による資産の移転は、財産分与義務の消滅という経済的利益を対価とする譲渡であり、贈与ではないので取得費、取得時期の引継ぎによる課税の繰延べはない。
財産分与(民法768)による資産の移転があった場合、その資産を分与した者は、その分与をした時においてその時の価額によりその資産を譲渡したこととなる。(所基通33-1の4)
離婚による財産分与によって財産を取得は、原則的には贈与による財産の取得には該当しない。(相基通9-8)
移転した不動産のうち、債務引受けに係る1,800万円に相当する部分は譲渡、1,200万円に相当する部分は時価による財産分与とされるので、この財産分与による不動産の移転による収入金額は、譲渡した不動産の時価に相当する3,000万円となる。
(贈与等により取得した資産の取得費等)
第60条 居住者が次に掲げる事由により取得した資産を譲渡した場合における・・・譲渡所得の金額・・・の金額の計算については、その者が引き続きこれを所有していたものとみなす。
1 贈与、相続(限定承認に係るものを除く。)又は遺贈(包括遺贈のうち限定承認に係るものを除く。)
(財産分与による資産の移転)
所基通33−1の4 民法第768条《財産分与》の規定による財産の分与として資産の移転があった場合には、その分与をした者は、その分与をした時においてその時の価額により当該資産を譲渡したこととなる。
(分与財産の取得費)
所基通38−6 民法第768条《財産分与》の規定による財産の分与により取得した財産は、その取得した者がその分与を受けた時においてその時の価額により取得したこととなることに留意する。
(婚姻の取消し又は離婚により財産の取得があった場合)
相基通9−8 婚姻の取消し又は離婚による財産の分与によって取得した財産については、贈与により取得した財産とはならないのであるから留意する。ただし、その分与に係る財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮してもなお過当であると認められる場合における当該過当である部分又は離婚を手段として贈与税若しくは相続税のほ脱を図ると認められる場合における当該離婚により取得した財産の価額は、贈与によって取得した財産となるのであるから留意する。
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Wednesday, May 5, 2010, 04:36 PM - 相続税・贈与税
1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算に当たって、被相続人の死亡を保険事故として評価会社が受け取った生命保険金の額を生命保険金請求権として資産に計上する。その保険料(掛金)が資産に計上されているときは、その金額を資産から除外する。
また、その生命保険金を原資として支払った被相続人に係る死亡退職金の額、支払退職金を控除した後の保険差益に対する法人税額等を負債に計上する。
1 被相続人の死亡を保険事故として、評価会社が受け取った生命保険金は、保険事故の発生によりその請求権が具体的に確定するから、生命保険金請求権として資産に計上することになる。
「取引相場のない株式(出資)の評価明細書」の「第5表 1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の記載に当たっては、「相続税評価額」欄及び「帳簿価額」欄のいずれにも記載する。
この場合、その保険料が資産に計上されているときは、その金額を資産から除外する。
また、その生命保険金を原資として被相続人に係る死亡退職金を支払った場合には、その支払退職金の額を負債に計上するとともに、支払退職金を控除した後の保険差益について課されることとなる法人税額等についても負債に計上する。
2 評価会社が仮決算を行っていないため、課税時期の直前期末における資産及び負債を基として1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)を計算する場合における保険差益に対応する法人税額等は、この保険差益によって課税所得金額が算出される場合のその課税所得の42%相当額によって差し支えない。
財産評価基本通達185、186、186-2
平成2年12月27日付直評23外「相続税及び贈与税における取引相場のない株式等の評価明細書の様式及び記載方法等について」通達 第5表2(4)
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Saturday, May 1, 2010, 04:51 PM - 法人税
当社は製造業を営んでいる当社は、製造原価の原材料費に機械の取得価額58万円が含まれていることが税務調査で指摘され判明した。その機械の減価償却費は、それぞれの事業年度において認容されるか。
法31条1項(減価償却資産の償却費の計算及びその償却の方法)では、償却費として所得金額の計算上損金の額に算入する金額は、償却費として損金経理をした金額のうち、償却限度額までの金額であると規定している。
「償却費として損金経理をした金額」は、法人税基本通達7−5−1では、法人が償却費の科目をもって経理した金額以外でも、これに含まれるものが例示され、その(6)においては「少額な減価償却資産(おおむね60万円以下)又は耐用年数が3年以下の減価償却資産の取得価額を消耗品等として損金経理をした場合」が掲げられている。
その機械の取得価額は58万円なので金額的には認められるが、原材料費という科目で損金経理をしたことが、「消耗品等として損金経理をした場合」に該当するかどうかについては、この処理が一般に公正妥当な会計処理をしたと言えないことから、この取扱いからも、「償却費として損金経理をした金額」には含まれないものと考えられる。(消耗品等は少額な資産を費用として処理する科目であり、ゆえにこの取り扱いが認められているといえる。)
また、減価償却資産の取得価額の全部又は一部を資産に計上しないで損金経理をした場合であっても、その事業年度の確定申告書に添付する「減価償却の計算に関する明細書」に、その金額を記載し、申告調整をしているときは、その記載した金額は、償却費として損金経理をした金額に該当するとして取り扱うこととされているが、この取り扱いによる申告調整をしなかった場合に、税務調査において減価償却資産の取得価額の損金算入を指摘されたというときは、法人税基本通達7−5−1(6)の「償却費として損金経理した金額」に該当しないため、減価償却費として認容されることはない。
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